伝わるスライドの作り方|文字と写真は同時に出さない
1枚のスライドに文字と写真を同時に置くと、どちらか片方しか見られません。人が一度に追える対象はひとつだからです。伝わるスライドにしたいなら、1枚で扱うことをひとつに絞り、あとは出す順番で感情を設計する。作り込みの量より、順番のほうが効きます。
文字と写真を同時に出すと、どちらかが消える
発表資料を一緒に手直ししていたとき、目の前ではっきりした現象がありました。同じ1枚に文字と写真が並んでいると、こうなります。
「文字だけ見ちゃってる人はこっちの画像を見ない」
文章に目を落とした人は、最後まで文章を追います。その間、写真は視界の中にはあっても、認識はされていません。
並べれば両方届く、とはなりません。片方が黙って消えます。文字量を減らして写真を大きくしても、この性質は変わらない。読める文字がそこにある限り、人はまずそれを読もうとします。
だから、1枚で扱うことはひとつに絞る。文字で伝えるのか、写真で伝えるのかを、作る前に決めておく。迷ったときは、その1枚を2枚に分けたほうが早いことが多いです。
オチに使う写真は、後から出す
実例で説明します。
その資料には、赤ちゃんの写真が登場する場面がありました。まず話だけを進め、あとから写真を映す。そこで「私なんですけど」と一言添える。客席が小さく笑う。
この段取りは、写真を文字と一緒に出した瞬間に壊れます。先に画が見えていれば、落ちる場所がなくなるからです。
動かしたのは順序だけ。それでも会場で起きることは別物になります。ご本人は、この感覚をこう言葉にしていました。
「感情の、このズレみたいなのが、パワポを統一してあげることによって掴みやすくなりそう」
書式を統一する作業は、体裁を整えるだけの工程だと思われがちです。実際に組んでいるのは、聞き手の感情がどの順で動くかの設計になります。
完成度が高いほど伝わる、とは限らない
資料についての考え方も、記憶に残りました。
「手作りの粘土細工みたいな方が人の心が動く」
整った既製品より、多少いびつでも本人の手が加わったもののほうが届く、という感覚だと思います。
販促の現場でも似た感触があります。仕上がりが良すぎる資料は、情報としては通るのに、作った人の匂いが抜ける。壇上で使う資料に限れば、精度と伝達力は比例しません。
だから、参考資料をいつ渡すかにも気を配ります。仕上がった見本を先に見せると、そこで考えが固定されるからです。
「いい素材をいただいちゃうと『これいいじゃん』ってそこに固まる」
「あれもらったら多分あの枠に俺、固まるなって思っちゃって」
率直な言葉だと思います。役に立つ見本ほど、いつのまにか外枠になってしまう。渡す順を変えるだけで、出てくる案が変わる。赤ちゃんの写真の話と、仕組みは同じです。
支給された型は、色変更までに収める
現場寄りの線引きについても話しました。
先方から支給された図版やひな形を、どこまで手を入れていいのか。角度をつけたり輪郭を変えたりするのは、判断が難しい領域です。
私の答えはこうです。
「多分、色変更ぐらいに収めた方がいい」
その色選びも、感覚で決めないほうが得です。基調色は自社ロゴの色から取る。
「そうすると他で提案書とか営業資料作るときにそのベースが使える」
目の前の1枚をしのぐためではなく、次の制作物の下地として決めておく。使い回せる形で選べているかどうかは、こういう細かい判断に表れます。
スライドを仕上げる前のチェックリスト
- 1枚で伝えたいことが、ひとつに絞れているか
- 文字と写真が、同じ1枚で視線を奪い合っていないか
- オチに使う写真を、先に見せてしまっていないか
- テーマカラーが、ロゴの色を軸に決まっているか
- 支給素材への加工が、色変更の範囲に収まっているか
最後に、ファイルの容量を落とす
最後は地味な話です。ただ、当日の事故はここから起きます。パワーポイントには、こういう仕様があります。
「パワポってサイズ大きいまま小さくしたとしても、大きいまま保管される」
画面上で写真を縮めても、元画像のデータ量は保持されたままです。結果として、ファイルは膨らみ続けます。
実際に150ppiを指定して画像圧縮をかけたところ、121MBだったファイルが30MB前後まで落ちました。見え方は変わっていません。
メールで送れない、会場のPCで開かない、本番中に固まる。こうした事故のほうが、多少の粗より確実に痛手になります。
出す順を組み、色の軸を決め、最後にデータを軽くする。ここまでが、資料をつくるという作業の範囲だと考えています。
まとめ
- 1枚に文字と写真を同時に置くと、片方は見られない。1枚1メッセージに絞る
- オチに使う写真は後出しにする。順番が感情の流れを決める
- 支給素材は色変更まで。仕上げに画像圧縮をかけて当日の事故を防ぐ
D-thermo株式会社では、登壇や発表で使うスライドの設計と制作を行っています。構成の順番から色の決め方、当日のファイル運用まで含めてお手伝いすることが多いです。