AI生成のプレゼン資料を直す手順|削って伝える
AIで作った登壇資料が伝わらないのは、たいてい出来が悪いからではありません。情報を全部スライドが抱えてしまい、話す人が読み上げ役に回るからです。直し方はひとつで、足すのではなく削ること。1枚で言うことをひとつまで落とすと、本番で使える形になります。
AIに任せると「説明資料」になる
登壇用の資料について相談を受けたことがあります。困りごとは最初から明確でした。AIに任せると「説明資料」ができあがってしまい、そのままでは壇上に持っていけない、と。
興味深いのは、品質が低いわけではないことです。説明のための資料としては、むしろ優秀。項目は整理され、流れも破綻がなく、目で追えば理解できる。
ただ、その人が欲しかったのは、黙って読めば伝わる資料ではありませんでした。ここが噛み合わないまま作り直しても、納得できるものにはなりません。
話し手が主、スライドは副
その分野には、こんな決まりごとがあると聞きました。
「大切にしているのは話し手が主で、パワポが副という補足」
中心にいるのは人間で、スライドは横に控えている存在。会場の視線も関心も、壇上の本人に集まっていなければ意味がない、という考え方です。
ところが機械にまとめさせると、この上下が逆さになります。情報をすべてスライドが抱えてしまい、本人はそれを声に出す役に落ちる。
「AIに作ってもらっちゃうとまだちょっとそこがうまくいかなくなっちゃう」
問題は道具の性能ではなく、主役と脇役が入れ替わってしまうことのほうにあります。
原因は、文字起こしを丸ごと渡していること
なぜひっくり返るのか。原因は、AIへの渡し方にあります。いちばん多いのがこれです。
「フルフルで文字起こししたもので頼んじゃうと、結構ボリューミーになっちゃうというか、説明しようになっちゃいがち」
喋った内容をまるごと投げれば、まるごと反映されます。当然です。渡された材料を大事に扱うのがAIの性質で、どれを捨てるかという判断だけは代わりにやってくれません。
情報が詰まった1枚は、それだけで話が閉じてしまいます。閉じた資料の隣に立つ人間には、担当する仕事が残らない。
断っておくと、私自身も同じツールを使っています。
「あれも一応ベースでは作ってはいるんですけど、やっぱりちょっと削り落としていかないと、どうしても分かりづらくなっちゃう」
たたき台をAIに作らせるのは合理的です。速度がまったく違う。ただ、そこから落としていく作業を人間が引き受けないと、分かりやすい形にはたどり着きません。増やすのは機械の得意分野で、何を捨てるかは人が決める。線の引き方はそこだと考えています。
直し方の手順は、1枚1メッセージまで落とすこと
どこまで削ればいいのか。目安にしているのは「ワンメッセージで写真とかももう一枚」という形です。そのスライドで主張することは1つだけ。あとは写真を1枚添える程度に留めます。
動きも極力入れません。手の込んだアニメーションは制作中こそ面白いのですが、当日は「ボタンをいっぱい多く押すような、その気が散るので」。操作の回数が増えるほど、話す側の集中は削られます。
別の案件でも同じ助言をしました。「結構詰め込んじゃう人が多い」のが実情で、でも「皆さん話し上手なんで、それに補足するようなちょっとしたワンメッセージ、写真ぐらいの感じでいい」。
そもそもこれは「普通の研修とかのプレゼンテーションとはまた違う」用途の資料です。知識を配る場ではなく、話す人自身を見てもらう場。だから、載せてよい量の基準が変わります。
AIが作った資料を削るときのチェックリスト
- 1枚で言っていることが、ひとつに絞れているか
- スライドだけで話が完結してしまっていないか
- 話し手が口で言う内容と、スライドの文字が重複していないか
- アニメーションが、本番の操作回数を増やしていないか
- 説明ではなく、話し手の補足になっているか
完成イメージがなくても、頼んでいい
ここまで書くと、完成形が見えていないと発注できない、と受け取られることがあります。
実際にはその必要はありません。その方にも、手書きのままもらえれば清書はこちらでやります、と返しました。
返ってきたのが、この一言でした。
「絵コンテみたいな感じですよね」
うまい言い方だと思いました。仕上がった案を用意しなくていい。何をどの順で話し、どこで気持ちを動かしたいかだけ分かれば、形にはできます。
見積書を送ったあとに届いたのは、こういう返事でした。
「すごい心が軽くなります」
「マジでよかった、心強いです」
資料の相談は、資料そのものの相談でないことがよくあります。どこまで捨てていいのかという判断を、ひとりで背負っているのが重い。そこを一緒に持つのが仕事だと思っています。
まとめ
- AIの資料が伝わらないのは、話し手とスライドの主従が入れ替わるから
- 文字起こしを丸ごと渡せば丸ごと載る。削る工程は人がやる
- 1枚1メッセージと写真一枚まで落とすと、本番で使える形になる
D-thermo株式会社では、登壇資料やプレゼン資料の整理と制作を承っています。手書きのメモや話す順番の走り書きからでも組み立てられるので、形が決まっていない段階でもご相談いただけます。