数字で納得してもらう販促の伝え方|体感値でいい
数字で判断するお客様に、感性の言葉はほとんど届きません。「もっとおしゃれにしましょう」「これが今のトレンドです」と伝えても、話が前に進まない。必要なのは、こちらが持っている確信を、相手が使っている単位に置き換えて渡すことです。しかもその数字は、厳密な統計である必要がありません。体感値で足ります。
「それって何パーセントですか」と聞かれる理由
ある事業者の方から聞いた話です。そのお店の客層は、理系や技術職の方に寄っているそうです。珍しい話ではありませんが、困るのはその先でした。相談が進むと、決まって同じ質問が飛んでくる。
「それって何パーセントぐらいですか」
計測したことがないので答えられない、と正直に伝えても、そこで終わりません。「じゃあ体感で構わないんで」と重ねてくる。そして返ってきた答えを、その場でメモ帳に書き取っていくそうです。
「これが答えみたいなのが欲しいみたいな感じ」
会話を楽しみに来ているわけではないんです。持ち帰って自分で判断できる一行を探しに来ている。ここを読み違えると、どれだけ丁寧に説明しても手応えが返ってきません。
感性の言葉が止まってしまう原因
提案の質が低いわけでも、商品に問題があるわけでもありません。相手の物差しと、こちらが使う言葉の単位が噛み合っていないだけです。
「よさそう」で決める人と、「何割か」で決める人がいます。後者にとって、センスの話も流行の話も、判断の材料になりません。その方の実感も同じでした。
「こういうのをおしゃれした方がいいですよ、こういうのがトレンドで、とか言っても全然響かない」
やっかいなのは、届かない相手ほど「じゃあ何をすればいいのか」を強く求めていることです。求めているのに受け取れない。だから、答えの形のほうを変えます。
確証の数値でなくていい。体感値でいい
その場で私が出した提案は、これでした。
「確証の数値じゃなくてもいいんですけど、体感値みたいな感じがいいかもしれないです」
統計らしい統計を持っている小さな事業者は、まずいません。ただ、持っていないことを理由に数字を避けるより、手元の実感を数字の形に整えて渡すほうが早い。
「たぶん、うまくいきますよ」と「体感で言うと、このくらいの割合です」。中身が同じでも、受け取られ方はまったく違います。前者は感想として流れ、後者はメモとして残ります。
「ゼロが33%になった」に言い換える
たまたま手元にあった実例で説明します。
ひとりめは、月に60件の申し込みを出しても、結果がまったく出ていなかった方です。写真を差し替えた月に、5件が成立しました。
ふたりめは、こちらから動かないかぎり申し込みが入らない状態だった方。ある月に3件届いて、うち1名が次の段階へ進んでいます。
この2つを、起きた順に報告しても間違いではありません。ただ、数字で判断する相手には、こう置き換えたほうが速い。
「もともとゼロだった確率が33%に上がったんです、みたいな」
事実は何ひとつ変えていません。変えたのは単位だけです。「そういうのが好みそうな感じしますね」と、その場では話していました。
数字に置き換える前のチェックリスト
- 相手が判断に使っている単位は、感覚か数字か
- 手元にある出来事を、件数・割合・期間のどれで表せるか
- 「体感です」と前置きしたうえで、言い切れる範囲か
- もとの状態(分母)を、あわせて伝えているか
- 相手がその場でメモできる長さに収まっているか
筋道を立てて説明すると、購入まで進む
数字だけの話ではありません。説明の順番にも、同じことが起きます。
その方は、清潔感を分解して伝えます。決めているのは髪型と表情と服装の三つ。そしてこの三つは結局、相手が自分の「パーソナルエリア」、つまり両手を広げた半径1.5メートルの円の内側に、この人なら入ってきていいと思えるかどうかに効いている。そういう順で話すそうです。
ここまで並べると、返ってくる言葉が変わります。
「じゃあ洋服っているんですね」
そこまで来れば、「必ず購入につながる」とのことでした。
販促の現場を見ていても、モノが動くのは情報が増えた瞬間ではありません。ずっと感じていたことに、名前と順番がついた瞬間です。
お客様は、もう気づいている
最後に、その方が言った一文を書いておきます。お客様は「どっかがダメなことは分かっている、ただそれが自分でできない」。
気づかせる工程は、多くの場合いりません。本人はとっくに気づいている。欠けているのは、順を追って説明する言葉と、納得に使える物差しのほうです。
販促は新しい知識を授ける仕事ではなく、相手の物差しに合わせて言い換える仕事。そう捉え直すと、通らなかった提案が通ることがあります。
まとめ
- 数字で判断する相手には、感性の言葉ではなく数字の形で渡す
- 厳密な統計は不要。「体感です」と前置きした割合で足りる
- 教えるのではなく、相手が使っている単位に翻訳する
D-thermo株式会社では、中小企業や個人事業の販促物・広告まわりを、ヒアリングから制作まで一緒に組み立てています。伝えたいことは決まっているのに言葉の形が定まらない、というときは、その整理から入ることが多いです。